新幹線台車の強度不足

台車に亀裂が入っていて危うく破損するところだったことから、改めて台車の調査が行われ、設計値よりもかなり薄く削った(報道によると8ミリの板厚の板を最大で3.3ミリ削った)ものが10台以上見つかって世間を騒がせている。
ある新聞のコラムでは、日本のモノづくりが危うくなってきたとか、現場との情報のやり取りができなくなったとか、書かれていたりする。
でも、小さな町工場ならともかく、大企業では現場と設計とは切り離された状態が昔から普通である。というより昔の方がエリート層と肉体労働者層とが分かれていてコミュニケーションは、取れていなかったように思う。実際、私も30年近く前のことであるが、設計では考慮できていなかったことが現場ではよく発生していた。今回の台車のように設計には無い、何かを合わせるために板を削ったり穴をあけたり、ということはある意味日常茶飯事であったように思う。
ただ、その当時問題とならなかったのは、今のように有限要素法などの解析をそれほど活用していなかったので、かなり大きな安全率をとっていた、というのがあると思う。現在は、解析手段が発達・普及し、PCの能力も上がったことからかなり詳細な、限界に近い設計を行っている。つまり安全率を下げて設計している(設計することができるようになった)。
これに伴い、現場との情報共有も密になっていなければならなかったのが、そちらの方は昔とほとんど変わらない状態であることが、今回の台車の問題となっているように思う。
もしかすると、最近あちこちで問題となっている検査関係の不正などもそのような構造的な矛盾(技術の発達に人間の方が追い付かないこと)が顕著になってきた、ということかもしれない。

メッシュを切るということ

メッシュには主に三角形と四角形がある。ソリッドだと四面体(テトラ)と六面体(ヘキサ)となる。当然三角形だとメッシュが切りやすいわけだが、計算精度が落ちてしまう。そこで三角形と四角形を組み合わせたメッシュ分割もある。

有限要素法が使われだした頃は、メッシュを自動で切ることができず、さらにCADもなかったので図面から座標を拾ってメッシュを定義していた。もちろん大きな部分を定義してその内部を計算機に分割させるのですべてのメッシュを手動で定義するわけではない。この時代は手間はかかっていたがメッシュの形状は細部まで把握できていたので個人のスキルのみで精度の良いメッシュを作成することができた。

メッシュの自動分割が当然のようになると、何も考えずにメッシュ作成することができメッシュの形状を考慮する機会が減った。もちろん、アスペクト比を計算したり、鋭角になったりするメッシュを見つけることができる。ただ、見つけたとしても自動で作成されたメッシュを手動で修正するのは容易ではない。近傍のメッシュが影響を受けるからである。

複雑な形状だと、解析の結果でメッシュの形状がおかしいことに気づくこともある。その段階でも気づかないようであれば、スキルの問題だろう。

 

過渡応答解析

固有振動数の解析をした結果、共振が避けられない場合、過渡応答解析をして想定した加振に対して構造物が耐えられるかどうかを詳細に検討することになる。

ただ加振がエンジンなどであれば、それほど外れることはないが、地震などの自然からの加振の場合は、想定によって結果が大きく変わることになる。

最近は、地盤からモデル化し地震波を計算、それを加振力とするような大規模計算も可能になっているので精度が少しずつ向上していくのかもしれない。

流体解析

流体は構造解析と違って運動しているものを対象としているので、定常流れであっても逐次解析が必要である。
それによって、ちょっとした条件の違いで結果が大きく異なっていることもある。例えば、川の上流でのちょっとした流れの変化が下流に行くと大きな蛇行となる場合があったり、黒潮の流れなどもあるちょっとしたきっかけで大きく蛇行したりする。
結果から原因を探ってみる、という観点からはどのような変化があればこのような大きな蛇行が発生するのか、解析を繰り返すことで可能になるはずである。いまだ不明のままなのは、計算機の能力不足と解析条件を詰めることができないためだ。

今後はAIなどとの組み合わせで黒潮の蛇行やエルニーニョ現象なども予測できるようになるに違いない。

座標系

座標系は厄介だ。全体座標系と局所座標系があるが、局所座標系を何を基準に定義するか、全体座標系との関係を定義しない。
要素の方向は最近の自動メッシュ分割ではどの方向に作成されるか予想できないし、異方性材料では材料の方向で弾性係数とかポアソン比とかが決まるが、部材が任意の方向に曲がっている場合もある。あるいは非線形計算では荷重によって任意の方向に移動していくわけなので、全体座標系から間接的にでも間違いなく定義できていることが重要である。
座標系でもう一つ、流体解析では内部と外部を分ける必要がある。要素の法線方向を定義しなければならない。法線方向というのが法線方向から見て要素定義の順番が右回りとかで定義されるので要素を定義する順番も関係することになる。

首都高と斧

構造設計を長年やっていると身近な構造物が気になることがある。
例えば、首都高の下を通る時このような構造物が大地震に耐えるのだろうか、とか斧を木に打ち込むときに柄の部分と刃の部分が外れることはないだろうか、とか。
首都高については、阪神大震災後、かなり補修工事が行われたが本当に阪神大震災級あるいは前の関東大震災級の地震に耐えられるのか、道路自体は耐えられたにしても走っている自動車は振動で外に投げ出されないのか、なぜあのような構造物にしたのか、など疑問が絶えない。
斧の場合だと木を切る(破壊する)エネルギーは柄の木でできている部分に伝わる際にかなり吸収してくれるらしい。刃の部分と一体になった斧も最近見かけるしそれだと刃の部分と柄の部分が外れる心配はないわけだが、エネルギーがそのまま持つ手に伝わってしまう。
昔からある構造はそれなりに意味を持っている。

CAEとAI

Tensorflow

CAEに最近はやりのAI(DeepLearning)を使う場面はあるだろうか。

考えられる可能性は

  1. 材料特性の推定、たとえば、材料試験をある程度やるのが前提だが、色々なパターンのFEM解析を行って試験結果に最も合うものをAIで推定する
  2. 事故を分析してその原因を突き止める、たとえば、事故の発生の仕方、分断された材料の破断面、構造部材の変形状態などを見てそれに近い構造物の状態をFEMで解析、AIで推定する

などが考えられる。

あるいは最適化問題や量子化学などのミクロ分野をFEM解析のマクロに適用する際にAIを使うこともできるだろう。今後大きく発展しそうな分野である。

材料特性

上の図で解析するうえで重要なのはAの比例限度である。Aのところまでは線形解析ができるから。

Bの弾性限度はそれ以上になると塑性歪が発生し永久歪が残ることになるので設計の許容限度点として重要である。ただ、弾性限度というのはいったん引っ張った後、元に戻してみて永久歪が発生しているかを見なければならず、この点を材料試験で特定するのは困難である。その点、降伏点は力が抜ける点なのでわかりやすい。

また、A,B,C点は同じ付近にあるし、ほぼ線形とみなすこともできるので降伏応力を許容応力として設計することが多い(ほとんどである)。もちろん、解析の誤差、材料のばらつきなどもあるのである程度の安全率をとって設計するということもある。

フロントローディング

 


構造解析する一般的な目的は、基本構想や基本設計などのできるだけ最初のうちに構造の問題点を把握し、問題が発生しない構造設計を行うことにある。できるだけ初期段階で行う方が大胆な改良を施すことができるので解析するメリットはより大きくなる。
もう一つの目的は、実際に問題が発生した場合にその原因を探るためである。例えば構造物が崩壊した場合にその原因を探る手段の一つになりうる。残っている部品の形状、破断面などを見てどこが問題となったのか仮説を立てそれを解析によってシミュレートすることでその仮説が正しかったことを確認するのである。
複数の可能性がある時にどれが原因かを確定するためにも有効である。
最近では、これまで設計者がいろいろ考えて最適化していたものを確認する、というにとどまらず、積極的に解析によって最適な形状を探索する、ということも行われるようになった。計算機の能力が上がり、数百回、数千回もの解析が可能になったためである。

固有振動数

固有値解析では、固有値そのものが本来の構造物の固有値かを確かめるのが重要である。
通常、固有値解析を行うと構造物全体の固有値とは別に一部分だけが振動するときの固有値も出てくる。
これを区別するには振動モードを見る必要があるが、複雑な構造物だと見分けるのにそれなりの経験が必要である。
2次3次が1次の倍数に近い値となること、節の部分の数、構造物全体の固有値には2次3次もあるはずなこと、などいろいろな推理を働かせて決定する。